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あるオオギリストのちくわ私小説 3

この物語はある女性オオギリストのちくわにまつわる実体験を想像し、
大幅に脚色を加えたものである。

つまり、大きな意味でノンフィクション小説である為、
プライバシー保護の観点から、その女性の名は一旦伏せておく。

それではご覧ください。
不定期小説 ちくわ物語 第3話 憐華編



私の彼はちくわを指にはめて食べる。
だから、私は彼の指をあまり見たことがない。
ピアノ奏者のような長くて細い指をしているはずなのに、私と会う時の彼の指は、10本とも肉厚のあるちくわに覆われていて、まるで不器用な博士の作った工学ロボットと会ってるような気分になる。
彼がちくわを食べるにつれて、私は彼の綺麗で細長い指を見ることができ、代わりに彼との時間を失っていく。
一定のペースで減っていくちくわは、まるで私との決められた時間を計る砂時計のようだった。
ちくわが最後の一本になると、彼はいつも最後のセリフを言う。
「それじゃ、行くよ」と。

彼はいつも、左手の薬指にはめたちくわだけを残す。
「なぜ、いつも一本残すの?」
「君の今日のことを考えながら、帰りに食べるためさ」
彼は笑って言う。
――本当はこう訊きたかった。
「なぜ、いつも左手の薬指のちくわだけ残すの?」
と。

だけど、私はその問いをいつも胸の中にしまう。
なぜなら、きっと私はその答えを知ってるから。
訊いてしまったら、彼とのこの時間が終わってしまうことを知ってるから。

その日家に帰った私は、冷蔵庫からちくわを取り出して、彼がしていたように左手の薬指にはめて、ゆっくりとかじりついた。
今頃彼も、こうやって最後のちくわを食べてるんだろうか。
それとも、彼を待っているもう一人の誰かの為に、ちくわを包んでいるのだろうか。
私は左手の薬指を見る。
1cmほど残ったちくわが、まるで指輪みたいに私の指を締め付けている。
いや、私の心をーーー。

おそらくこれからも、私が彼の左手の薬指を見ることはないだろう。
そして、その指に巻かれた結婚指輪も。

だから、私は自分の指に巻かれたちくわの指輪を見つめる。
たとえ蜃気楼のようにはかない想いだとしても、私にとっては、これが彼との絆なのだから。

そんなある日のちくわの話。
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